2006/09/25 

 

あぁ無情、山本鱒師の神谷堰堤物語

 

9月25日() シーズン初期、「今年は30回のサツキマス釣行をする」って宣言したけど、マスの遡上が始まっても、一向に腰を上げなかった山本鱒師。遡上するサツキマスの数は史上最低だったし、体調も優れず・・・っていうのもあったが、そんなことはアヒル倶楽部では通用せず、「あんたねぇ、30回はど〜なった?」「そんなんだと、ダック山本って呼ばれますぜ・・・」とか言われていた。

 ベストシーズンの6月、7月になっても山本鱒師の動きはなく、もう、鱒師は竿を握らないのか?という噂もささやかれだした9月。どういう訳だが、山本鱒師は神谷堰堤に降り立った。

 釣りって言うのは、行かなくなると、本当に行かなくなる。が、一回行くと、行き出す。サツキマスも尺アマゴも釣れなかったけど、釣り自体が楽しかったのか、その後、毎週のように神谷堰堤へ通い出した。

 そんなシーズン最終の日曜日、今年の竿納め釣行。史上最低のサツキマスシーズンだった2005年だけど、知り合いの小牧のスゴ腕さんは、神谷堰堤でサツキマスを仕留めているし、目の前で小型がジャンプするのも見た。やっぱり釣りたい・・・サツキマス。

 

 神谷堰堤を正面から見て左側。そこは岩盤むきだしの岩場です。そこへ行くとて竿を伸ばしたまま、ミミズのついた針を持ち岩場を移動。こっち側は大イワナが釣れるところでもあります。

 ふとした気のゆるみか、岩場ですべる。

 

どぼーん

 

鱒師は水中へ。巨大堰堤のプール。水深は2〜3メートル?くらいはあるだろう。ブクブク・・・。

手に持っていたスコットやセージが買えるくらいの本流マス釣り竿は、水の抵抗で、ベキッって折れた。10本継ぎ、9メートルの本流竿が手元1.5メートルくらいのところで真っ二つ。折れた7メートルは流れていくが、先述したようにミミズを持っていたので、ミチ糸は穂先にある。それをたぐって、7メートルは回収した。

 ふと左手を見ると、時計がない。タイメクスか、カシオなのか、なんなのか、ちょっといいダイバーズウォッチがない。留め具がはずれて、落ちたようだ。水中を見ると、なんか、銀色に光るモノがある。がーん。ショック。G・ショック?

 山本鱒師は水中観察も好きで、箱メガネを車に入れている。それを持ってきてしっかりと観察すると、それはやっぱり鱒師の腕時計だった。

 水深は2メートル以上ある。潜っては取れない。今し方折れた愛竿、それを伸ばすとなんとか底へ届くくらいは伸びる。サツキマスを釣るはずだった釣り針を竿の頭に、これまたサツキマスを釣るはずだったテグスでくくりつけて、引っかけ棒を作った。これで何とかなるかも知れない。

 いっくらプールといっても流れはある。竿は水に流されて、2メートル以上ある底の腕時計の位置にうまく降りない。両手でやれればいいが、左手は箱メガネを持っているので、これまたうまいこといかない。まさにタコ漁、エビ漁の世界だ。

 イライラするような作業を繰り返して、やっとこせ時計にハリがひっかかった。といっても6号か7号のマス針。ひっかかっているといっても、魚でいえば皮一枚っていう事。静かに、静かに、引き上げる・・・・。静かに静かに・・・。 あと少し・・・っていうところで・・・。

 

さようなら・・・

 

壇ノ浦へ沈む平家のごとし・・ベンベンと琵琶法師がいたら唄うであろう。キラキラダンスをしながら沈みゆく山本鱒師の腕時計。はじめに乗っていた底石を逸れて、向こうの深みへ落ち着いた。なんてこったい。でも、見捨てるわけにもいかない。また、地味な作業を繰り返し、ようやく回収。精根尽き果て、ふと後ろを見ると、餌釣師が呆然と見ていた。そりゃそうだ、サツキマス釣りで有名なポイントで、タコ漁だもんな。

 

 後日、折れた愛竿を修理に行きつけの釣具屋へ置いてくる。しばらくして電話がかかる。

「鱒師、悪いけど、1本流れていますぜ」 そーなんですよ。10本継ぎの1本はどうも流れたようです。修理見積もりは3万はするだろう・・・って事。

 釣具屋もかわいそうと思ったのか、同じ竿をちょっと安くするから買った方が良いよ。ってんで、買ってしまいました。店主に「まぁ、岩場で転んで頭でも打って、水飲んだら、あの世行きだから、竿が、厄をはらったんだよ。身代わりだと思って・・・」って、慰められました。まぁ、10本継ぎのうち2本はダメだけど、あとは生きているから、穂先が折れたりしたら、交換可能・・・。と思って元気出して来年も行きましょう。