愛すべきアヒル倶楽部の人々シリーズ

ダック水族館の、謎の水生昆虫・羽化 / ダック鈴木

 

 おらぁダック鈴木だ。おら、9月のなかばに、長良川の千疋っちゅー、まー、武儀川が出てくるあたりで、嫁ダックと、アユ釣りしとったがや。嫁はアユ釣りはやらんで、ノベ竿持たせシロハエを釣って遊んでいたんだがや。言っとくが、おらぁ、アユ釣りは下手じゃねーぞ。ウッピーとかいうバカよりは断然ウマイ。まー、ウッピーの師匠はオラだけど。あいつはダメだ。あいつの釣りは、何でもそーだが、待ちの釣りだで、運がよくないと釣れねーんだな、これが。

 ウッピーはどーでもいいが、この日は、ちっともアユは釣れない。まー、周りもまったく釣れていないから、おらぁのウデが悪いというわけじゃないよ。現におらぁ、この悪条件の中でも5匹は、かけたモンネ。それでも、9bの竿をずーと持って、川の中で立ちつくすのは、つらい。それに比べりゃFFなんて、ちょろいもんだがや。おらぁ、の地蔵釣りは、こうして鍛えているから、アルツ石川ごとにが、マネをできないんだな。これが。

 いいかげん、嫌になって、竿をおいて、ビール飲む。嫁ダックは、黒川虫を捕って、浮き釣りでシロハエを、ポンポン釣っている。なんか、ソレの方が楽しそうだ。すでに15匹は釣っているみたいだ。岸を見渡したら、何だか、へんなのが、ある。行ってみると、それは金魚の水槽なんかによく入れてある、ホテイアオイというやつだ。よく見りゃ、岸にホテイアオイが打ち上げられている。なんで長良川にホテイアオイがあるんだろう?と思ったけど、それは事務局長に聞いてみよう。まー、とりあえず、おらぁのアパートにも、水槽があるし、金魚もメダカもタニシもいるから、ホテイアオイを浮かべてやろう。と思って、2つほど持って帰ったがや。

 

 事務局長が、ダック水族館と呼んでいる、おらぁの水槽にホテイアオイを浮かべてやった。翌日に、嫁ダックが、「なんか変な虫がホテイアオイの根に付いているよ」 と言うので、見てみたら、カワゲラか、エルモンのニンフみたいなのが、付け根あたりの膨らんだところに2つほどいた。で、何だか、目が飛び出ている。カワゲラやメイフライのニンフって、目は飛び出ていないよなー。これが夜になると、目が光って不気味だ。でも、そのうちに、金魚に食べられてしまうんだろーな。この謎の水生昆虫が欲しくて持ってきたわけじゃないから、ホテイアオイさえ元気ならいいもんねー。ところが、ホテイアオイは見る見る元気なくなって、とうとう枯れてしまった。たぶん日光があまり当たらないから、ダメだったんだ。そして食べられたと思っていた、目玉の水生昆虫は、ちゃっかり生きていて、チョコマカ動き回っている。いったい何なんだろー。

 9月の終わりに、石徹白でアヒル倶楽部・シーズン送りの会があって、事務局長やACFC−Y師匠も来るから、聞いてみようと、競輪の馬券ならぬ車券の裏に、目玉君をスケッチして持って見せたら、爆笑のウズになってまった。おらぁ、ちゃんとスケッチしたのに。おらぁの画は、いつも笑われる。事務局長は、「味があっていい」と言ってくれるけど。

 

 そのうちこの目玉君の事はあまり気にならなくなった。でも、ホテイアオイと一緒に来たときは、2p無いくらいだったけど、時々出て来るのを見ると、3pに近くなっている。大きくなっているんだ。でも、何だろう。尾が3本あるし、ニンフによく似ている。事務局長があれこれ調べて、イトトンボの幼虫に近いと言うが、トンボのヤゴって、こんな形しているかぁ?

 10月の半ば。とうとうFFも終わり、アユも終わった。やることない。月見のニジマスもまだだ。ヒマだから一宮競輪に行ったがや。結果は聞かないで。嫁ダックと午後4時半に自宅に戻った。そしたら嫁ダックが、「ねーねー、目玉君が水面で暴れているよ」 と呼ぶ。行ってみると、水面で、バシャバシャやっている。ちょうど、おぼれかかった人みたいに、まー、もがいているんだな。水生昆虫のくせに、おぼれそうとはどーいうこった?羽化するんか?そー思ったおらぁは、菜箸を入れてやると、目玉君は登ってきた。先端の少し下で、動きがとまった。そこへウッピー吉田から携帯が入って、「ヒマだから事務局に行って、おかずゲットで飲んじゃおう」という。事務局長は、今日の土曜日は仕事に行っているから、好都合。オヤジ君が漬けた漬け物がうまいんだ。嫁ダックに、このまま観察を続けろ。と言って、ウッピー吉田と事務局へ。

 しかし、事務局長が早くの帰宅で、ご馳走にはありつけれなかった。しぱらく喋っていると、嫁ダックから、連絡。背中が割れて、何か出てきたよ。オレも行く。という事務局長と戻ってみると、ネスカフェの空き瓶に菜箸が差してあり、その上の方に、モンカゲロウ?というのが、出ている。でも、モンカケロウは水面羽化だから、これは違うねぇ。じゃぁ、渓流で見るカゲロウや、カワゲラとは違うんだ。そのうちに羽根が伸びて、ウスバカゲロウ?じゃないの?それはあり地獄でしょう?ホテイアオイにあり地獄がいるのは変でしょ?今、事務局でヘラヘラしているのは、ウスバカだげどね。事務局長がデジカメするけど、ピンボケ、取り直そうとしたが電池切れでパー。

 何だ、何だ?と言ってるあいだに、ボディーがグングン伸びて、羽根もピンとしてきて、こりゃぁ、やっぱり、イトトンボだね。ボディーはテレスコになっていて、ちょうどラジオのアンテナを伸ばすように、ズンズンと言う感じで伸びてくる。すごい。

  

一応羽化が終わったら、先端に移動して、体が伸びきるまで待つようだ。これはどーしたらいいんだろう?と事務局長に聞くと、体色が出てくるまでは、動かないだろうし、羽根もしっかりしないと飛べないから、このまま色が付くまで動かないんじゃない? それはそーだと思うが、ここで飛ばれたら、もう採かまえれないよ。うんじゃぁ、このネスカフェの瓶に入れて、布巾をかけておいたら?ちゃんと成虫になったら逃がしてやれよ。と言うので、そうしてまた事務局に戻った。

 

翌日、ネスカフェの瓶の中で、きれいなトンボがブンブンと上下していた。これがあの目玉君なんだ。仕事をズルして、嫁ダックと、一緒に、千疋へ行き、そこで逃がしてやることにした。事務局長に携帯すると、逃がす前に、デジカメしてくれ。というので、事務局長室に行き、デジカメを持って、写してみたけど、やっぱりピンポケだった。千疋で、ネスカフェのふたを開けてやったら、大空へ飛び立っていった。事務局長が、あとで色々しらべたところ、アオモン・イトトンボというトンボだった。

 

そして2日たって、朝に水槽を見ると、背中が割れたまま、溺死している、目玉君2号が浮いていた。2匹いたんだけど、毎回見ていたのは、目玉君1号で、2号はすでに金魚のエサになってしまっていたと思っていたが、シャイな2号君は、細々と生きていたんだ。そして羽化の時が、夜中で、誰も気がつかず、つかまるモノが無くて、2号君はあえなく、溺死してしまったようだ。

すまん、2号君。君がいた事は知らなかったんだよ。あの美しい、アオモン・イトトンボになれなくて、ごめんねー。と、言いつつ、今夜は通夜だからと、また事務局長と飲んだった。