山田スモーク工房・語るも涙の燻製たまご物語。

 

 それは、山田伸チャの取引先の社長かなにかが、「七宗のドライブインか道の駅で売っていたんだけど、燻製のタマゴを食べたら、うまかった・・・。山田さんも燻製を趣味にしているのだろう? どうだ、燻製タマゴを作ってくれないか?」と言ったことから始まった。「うまく出来たら、工賃を上げてやろう・・・」って事はなかったらしいが・・・。

 サークルKとかにも売っている茶色い燻製卵。それと同じモノを作る・・・。それは、殻付きで殻はチョコレート色。それをむくと中からほどよい燻製色のゆで卵が出てきて、ちょっと濃いめの塩味と、スモークの香りがする。まぁ、できるだろう・・って軽くOKを出したが・・・・

 

 しかし、よくよく考えてみたら、どうやって殻のまま塩味を付けるのだろうか?伸チャはスモークの教本をあさる。すると、生卵を濃い食塩水につけ込んで、それを固ゆでして、殻をむいて燻製にする。と出ている。はじめは濃い食塩水に、2時間程度つけてみたが、全然、塩味は付かない。その後、4時間、6時間、一晩、一日・・・・とたっていくが、そのつど、茹でて、殻をむいて食べる。当たり前だが、タマゴは減っていく・・・。社長に持って行くんだから、1個2個という訳にもいかない。つまり、試行錯誤の試作段階から、いい具合まで持って行ったときに、それ相応のタマゴが残っていなくてはならないから、最初は30個以上から始めなくてはならないことに気がついた。

 1日漬け込んでも、タマゴの殻を透して塩分が入る事はなかった。2日やってもダメだった。伸チャは考えた。生タマゴの底に小さな穴をあけてやれば、そこから食塩水がしみこむっていうのはどうだろう。でも、これだと、茹でた時に、そこから爆発してしまい、おだぶつ・アーメン。

 このあたりで、どうも、伸チャが、燻製タマゴを作っている・・・っていうウワサがアヒル倶楽部内に広がる・・・。で、坪さんや、事務局長が、あーでもない、こーでもない・・っていらぬ知恵を授けるから、また、それを試さなくてはならない。毎日、3食、タマゴづくしの伸チャ。塩味が付いたかどうか、最初は茹でて殻をむいて・・・をやっていたが、めんどくさくなって、割ってすする。朝昼晩と生タマゴ。さすがの伸チャもいい加減飽きてきた。

 

 とうとう、生タマゴに塩味を付けて、茹でるという方法は行き詰まった。これでは、いつまでたっても燻製タマゴはできやしねー。

 

 とりあえず、茹でてそれから食塩水につけ込むっていうのはどーだろう?、これまた2時間、4時間、6時間、半日、1日・・・・とやってみたが、染みこむこととはなかった。またまた、タマゴ漬けの日々。 とうとう、当初描いていた、茶色く色づいた茹でタマゴ・・・・。それをむくと、ほどよい塩味と、スモークがかかった燻タマ。っていうのは、無理だって悟る伸チャ。

 

 だが、やっぱり殻をむいたら燻タマ。っていうのにこだわる。じゃぁ、茹タマゴをテーブルの上で転がして、殻に細かいヒビを入れて、そこから食塩が染みこんで、なおかつ燻煙したときにも、そのヒビから煙りが入り込んで、ヒビは入っているが、あこがれの燻タマの完成。むいて食べてあーおいしい・・・っていう図式を考える。

 このあたりで、事務局長や坪さんが、ネットなどから「市販の燻タマは、液燻製らしい。つまり燻製の香りのする味付け液につけ込んで作るらしい」って事を知って、それは趣味の燻製のおっちやんには無理だ。って教えるが、ガンとして言うことを聞かない。

 

 伸チャの発案の、細かいヒビ入り方式だったけど、やっぱり無理だった。当然、また、たくさんのタマゴを食べるハメになる。本当に行き詰まったが、ここであとには引けない。開発費はずいぶんとかかっている。

 

 しばらくして

 

 ある日、事務局長が仕事から帰ってたら、燻製タマゴが届いていた。でもそれは、伸チャが作ろうとしていた殻付きではなかった。燻製の教本に出ていた、いわゆるゆで卵の燻製だった。なーんだ、とうとう、伸チャもあきらめたんだ。ってパクリ。「うーん、まあまあだな」

 ちょうど、アヒル倶楽部・新緑祭・ライズマン山菜テンプラ宴会があったので、皆にも食べさせてやるか?っていって持って行った。なかなか好評だった。坪さんも宴会場に来たから、「伸チャから燻製タマゴが届いたから食べる?」っていうと、「うちにも来たよ。でも、頼むから、買ってくれ・・・。これは開発費がべらぼうにかかっているんだ」って泣くから、しかたないから、500円、めぐんでやった。まー、まずくはないね。でも、これといってなんだね・・・・。という事。事務局長は会社だったから、押し売り500円は免れた。ヤレヤレ。

 また、しばらくして、伸チャの工場に行くと、何やら、燻製のニオイが・・・。「何やってるの?」 「燻タマだがや」 坪さんの500円に味を占めたか? でも、どうやって、味を付けたんだろう。と思って、聞くと、「茹でて、殻をむいて、だし汁で煮込んで、それから、燻製にした」って言っていた。「・・・・」 まてよ。それって、オデンの燻製じゃないの?煮タマゴの燻製?でも本人は、自分がレシピした特製の付け汁を開発・・・って思っているから、おでんの卵の燻製とは思っていない。

 

 ダック鈴木曰く。ゆで卵は、茹でたてをアチアチ言って、塩かけて食べるのが一番おいしい。と言うし、ウッピーは、まー、たまに1つ食べれやいいね。って言う。伸チャの涙の結晶は、あんまり、どっちでもいいねー・・・。くれるんなら食べてやってもいい。っていう程度でしかないみたい。