ええかげんにして

仕事場で機械に指を挟まれて労災指定病院へ行った事務局長の涙の物語

 

 私が、怪我をしたのが午後5時10分。それから病院へ到着して、受付をしたのが20分。すぐに呼ばれて、処置室へ入ったのが午後5時30分でした。

しかし、一向に医者はやって来ない。どうやら建物は大きいが、医者は少ないようだ。かねてから、社内では、***はあまり良くない。と聞いていたのが頭をよぎる。

 若いナースも見あたらず。ズキズキする我が指先を見つめつつ、やっぱ、美人ナースはドラマの中だけか・・・と妙に納得。そして処置室で待っていると、レントゲンを撮るという。

 レントゲンの部屋へ行くと、神経質そうな、若い技師が、色々とポーズの注文をつける。私の指は、先程まで、挟まっていて、かなりペシャンコなんだ。指先が震えているのは止めようがないんだけど。それでも、何枚かポーズをとって、彼の期待に答えてやった。

 再度、処置室に入る。すると、そこに、これまた処置を待つ人が数名。ナースが、「今、やったばかりのキズを見るのは嫌でしょう?」と、他の患者に言い、私の指に、ガーゼを被せた。ちょっとムカッと来たが、このまま帰るわけにも行かず、「すいませんねー」とか言ってごまかした。

 処置室にある、長い堅いペットに寝かされて、点滴をすると言う。左のウデをめくって、待っていると、年輩のナースがやってきて、「ちょっとチクッとしますよ」なんて言いながら、点滴をする。

私は、中学の頃、大病をやって、嫌と言うほど、注射や、点滴はやっきたから、針の入り方で、すぐわかる。「こいつ、へたくそだ」と思ったが、それは当たってしまった。まもなくして、点滴が漏れている痛みがしてきた。「漏れているんですけど」と言うと、「どれどれ」「あっ本当だ」とその年輩ナースは言い、打ち直すという。しかし、打ち直してもらったところも、これまた漏れてしまい、「堪忍して・・・」と心の中で思ったが、これまた刺されてしまった。しかし今度もダメで、とうとうそのナースは、他のナースを呼びに行き、「わたし出来ないから、やってあげて・・・」と、言った。

バカヤロー、できねーんだったら、はじめからやるな。若いヒヨコのナースだったら、「いいよ、実験台にして・・」とか言うんだけど、こんなババーの餌食になりたかねーや。

 点滴が終わっても、いっこうに医者は来る気配も無い。処置室では、入れ替わり立ち替わり、処置に訪れていた人も、来なくなり、このまま、忘れ去られてしまうんじゃないか?と思った午後6時半にやっと、医者が来た。縫合するという。それで、麻酔をかけるけど、ショックがあるといけないから、テストすると言い、注射の部屋へ回されて、ツベルクリンのような皮下注射で、反応をみたけど、別に特異体質ではなかった。歯医者が使う麻酔と同じだという。

やっとこせ、処置が始まった。まず、麻酔をかけるという。でっかい注射器を持ってきて、「怪我した指だけに麻酔をする。他の指がしびれると、不都合だろう?」と言いながら、中指の付け根にグサッと針を突き立ててチューと入れる。そしてそのまま何かを探るように、また深く、突き刺して、チュー。今度は方向を変えて、チュー。2度目のグサッで、神経に当たったのか、肩の辺りまで、グキューンという痛みが走ったが、おかまいなし。

 そしてすぐに怪我している指の付け根をこれ見よがしにグイグイとゴムで縛る。どうも血管を圧迫し、出血しないようにしているのか?でも、今、打った麻酔はまだ指先まで往っていないうな気がするんだけど。と思ったら、医者が「だいぶ、しびれてきましたか?」と聞く。私の指は、ビリビリとしびれていて、これが麻酔によるものか、怪我によるものか判断がしずらいんだけど。続けて「何か触っている感触はあるでしょうが、痛みは無いですよねぇ」と念を押してくるが、その時には、すでにシザースを手に持っていて、そこらのめくれた指先の皮をパチパチ切っていた。

 麻酔が効いていると思っていが、ズキューンと痛みが走る。「センセ、痛いんだけど・・・。麻酔効いていないんだけど・・・」と言うが、おかまいなし。「本当に効いていなかったら、こんなもんじゃないぞ」って言う。そりゃそうだと思うが、完全に効いていないんだけど・・・。油や、色々なモノが傷口に入っている。「結構、汚れているから、念入りにやらないと・・」と言って、ヨードチンキがしみこんだ、脱脂綿で、こねくり回す。「痛いってセンセー」と言うが、これまたお構いなし。

 もー、嫌だ・・・と思ったところに、それじゃ、縫うわ。ってんで、針と糸持つ。針が、肉に突き刺さると、ジカーという痛みが。「センセ、くどいようだけど、本当に痛いんだけど・・・」と言うが、これまたお構いなし。どうも、私が言うと冗談っぽく聞こえるみだいだ。もー、何言ってもムダだと思ったから、ぐっと堪えて、後は何も言わなかった。そしたら、「おかしいなぁ、効いているはずなんだけど、あんたは、痛みに弱い人なんだ」なんて言う。麻酔打ったんだから、痛みに弱い強いは関係ないと思うが、いかに?自慢じゃないが、腎臓結石持ちの私は、あの悪魔の痛みにも耐えた経験がある。気が遠くなるようなあの結石の痛み。それを耐えた者に失礼だぞ。

 爪の方も縫われて、計5針ほどやられた。やっと終わって、例の看護婦が、「酒を結構飲む人は麻酔が効きづらいでねー」という。そんなに飲まないんだけどなー。

 終わって、出てきたら、午後7時を少し回っていました。こんなんありかなー。